パンク/ハードコア/サイコビリーの伝説的ドラマー達が、圧巻のトリプル・ドラム・セッションを繰り広げるユニット、「恒正彦」の初音源・映像作品が完成し三人のインタビューを行ったが、今回は三人目の恒正彦の「恒」ことHi-STANDARDの恒岡章の単独インタビュー。

初対面の中、普段インタビューではなかなか喋らないというTSUNEさんにいろんな話を聞いてみた。訥々と語る中に見える「熱」は恒正彦の三人にも共通するものに思えた。

恒正彦インタビュー最終回。他の二人と合わせて読むと、より一層「恒正彦」ワールドが広がるだろう。


恒正彦も自然な流れでこうなったというのが大きい

ー 実は俺、Hi-STANDARDのことをよく知らないんですよ。一回エアジャム(Hi-STANDARD主催のロックフェスティバル)で鉄アレイが出たときに観ただけで全然わからないので、本当に初歩的なことから。

全然大丈夫です(笑)


ー Hi-STANDARDっていつからやってて、何年ぐらいやってるんですか?

1991年からやり始めて、休み無く活動していたのは19年ですね。


ー 結構古いんですね。その前には何かバンドをやっていました?

いくつかやっていました。Chu-毒ってバンドを高校生のときに1年半か2年ぐらい。


ー え!?Chu-毒なの?知ってるよ!そうなんだ!Hi-STANDARDの最初レコードとかはインディーズの自主盤?

ディストリビュート的にはトイズファクトリーっていうところで、その中にあるインディーレーベルですね。


— それじゃぁ俺たちみたいにバンドやっててどこかインディーズのレーベルを見つけてそこから出すというわけじゃなくて、最初からちょっとちゃんとしたレーベルで出したんだね。

でもHG:FACTから12インチとか出してました。


— 本当に?そうなんだ!でもエアジャムに行ったときは本当にびっくりした。「こんなに人が来るんだ!」って。球場全体でみんなノってたし、これは凄いムーヴメントだなと。エアジャムって最近だとSLANGが出たり、俺が行ったときには鉄アレイが出たり、日本のそういう球場クラスとかの大きなイベントで、ちゃんとした日本のハードコアバンドを出した最初のイベントかな?と思って。

鉄アレイが出たときには原爆オナニーズも出てましたしね。その二年前にはアーバンテラーが出たりとか。
僕等三人は本当にハードコアとかパンクが好きで、恒正彦も自然な流れでこうなったというのが大きいです。
MASATO君は元々知っていたというのもあるし、HIKOさんとは一度Hi-STANDARDとGAUZEで対バンしたことがあって。
僕がドラムを始める前に初めてやったライブはベースでライブをやったんですけど、GASTANKとLAUGHIN’NOSEとGAUZEはやったかな?そういうジャパニーズハードコアを熱心に聞いていた時期があったので「GAUZEのHIKOさんとやるのか」「ASSFORTのMASATO君とやるのか」っていうのは凄く自然な感じがしましたね。

何かに合わせようというのではなく、みんなで出したもの自体がエネルギーになってる

— ドラムを始めたのはいつぐらいから?

始めようと思ったのはわかんないんです(笑)元はギターを弾いていたりしたんですけど、5人ぐらいでとりあえず一回スタジオに入ってみようと言って入ってみたら、持ってきたのがみんなギターだったりとか(笑)

でも、ドラムには何か惹かれるものがあったんでしょうね。その時にスティックを借りてドラムを演奏してみたら楽しかったので。

— ドラムを選んだ理由とかってありますか?

何だか分かんないんですよ。ただ、小学校4年生か5年生ぐらいの時に、実家がスナックだったのでカラオケとかで身振り手振りをしていたのは憶えてます。それで中学に入ってギターを始めて、中学校3年生ぐらいのときにドラムを始めて、高校生になってからはずっとドラムですね。


— ドラムの魅力っていうのはどんなところ?

すごく原始的な楽器だとは思うので、鳴らせば音が出るっていう。そういうシンプルなところが魅力ですね。


— 恒正彦をやることになった話は、他の2人にも聞いたんだけど。TOSHI-LOW(BRAHMAN)の言ったTSUNEさんを誘えばってことなんだけど、この恒正彦の話が来た時はどう思いました?

素直に「楽しそうだなぁ」と思いました。


— もともとバンド以外でドラムだけのユニットみたいなのはやったことがあるのかな?

やったことないですね。セッションみたいなので呼ばれて、1回だけトリプルドラムみたいなことはやったことがありますけど。もともと曲を演奏するのは好きなんですけど、セッションも苦手なので。HIKOさんとMASATO君とやってみれば?って言わる前に、HIKOさんとMASATO君とBRAHMANのドラムのロンジ、DRAGON ASHの桜井君の四人でやっていたセッションの話を、そのとき「ただひたすら演奏してる」っていうのを聞いて。HIKOさんのドラムのスタイルはとにかく全速力で突っ走ってるっていう話も聞いていて、僕はジャズが好きだったりするので、特にアンサンブルなしでスタートしてからゴールまで演奏し続けるというのは、自分の中にスッと入って来ましたね。


—それでやってみたら楽しかったと。

一番最初にやったときからそうですね。その前の4人でやったときは「誰かの曲のリズムをやろう」という話になってたらしいんですけど、HIKOさんはお構い無しに自分のペースでガーッと行ったという話を聞いていたので、そういうフリーフォームでいいんだと。HIKOさんもノイズが好きだったりして、僕もそういったものが好きだったりするのでイメージがすぐ出来た感じですね。


— やってみて他の2人ってどんな感じ?

MASATO君は骨太な男らしい、男気溢れるドラムだなと思います。HIKOさんはMASATO君とはまた違うんですけど、瞬発力があるというか。


— スタイルが違う3人の中で自分はどういう意識でやろうと思いましたか?

特にMASOTO君HIKOさんがこうだから、自分がこうしようとかは全く思ってなくて、 1番最初に2013年にライブをやったときから、特に何も先入観はなくスタートして30分、35分ドラムを叩くという。


—ドラムだけのユニットの魅力っていうのは何かありますか?

恒正彦においては、アンサンブル的なものはほとんど無いので、多少のルールというか時間に区切りを置いて進行して行って、三人ともそこで「自分の中に持っているものを全て出す」っていう意識でやっているドラムだけのセッションというところが。
何かに合わせようというのではなく、みんなで出したもの自体がエネルギーになってるっていうところが面白いんじゃないかと。


— 時間以外には何も決め事は無い?

最近だと「ここになったら止まってみよう」とか、そういったことはいくつか設けていたんですけども、それ以外はないですね。


— チューニングとかは変えたりしてますか?

僕には意識していないです。


ーみんなそうなんだなぁ。

だからみんな自分が「こうしたい」というのがあって、それで出て来た音っていうことですね。同じ時間を共有しているという部分もあるので、そこで皆が出せるものをとにかく出して、それが何か1つのものになればいいということだと思います。

僕としてはジャズ的な感覚はあります

— このバンドのリーダー的な人は?

どうなんでしょうね?トータルで言っても10本もライブはやっていないんですけど、やって行くうちに、みんなが時計を見たほうがいいと時計を用意したり、今回レコーディングに向けての段取り的なところは自分が動いた部分はあるんですけど。
いろいろ自分から率先してそういう風に動くということが今まであまり無かったんですけど「たぶんみんながこうしたいんだろうな」って言うことをキャッチして形にしたっていうだけですね。もう本当に段取りだけで。

— その分やっぱり気持ちが乗ったってことですよね?乗らなかったらそんな動きをしないと思うし。

HIKOさんから年明けに物凄い勢いのメールが来て(笑)保存してありますけど(笑)


— 最初はMASATOだけが時計を持っていて合図みたいなのを出していたと聞いたんですけど、みんなが時計を持つようになるとそことの違いはありますよね?

MASATO君だけが時計を見ていると、少なからず僕もHIKOさんも時間に対して迷いが出てしまって、やはり3人とも同じ時間を見たほうが良いと。みんな同じ時間を見ている方が迷いがなくなるので。


— HIKOは「バトルだ」って言ってるんですけど、やっぱりそういう感覚はありますか?

そうですね。とにかく自分の持っている力をそこで全て出そうとしているところでは、うん、ある意味バトルだとは思います。


— そういう「バトル」という意識でやっていますか?

そこもあんまり考えてないというか(笑)スタートしたら自分の持てるものを出すというだけで。映像でMASATO君が言ってましたが、みんなの持っているエネルギーを出すという。


— このバンドの…バンドですよねこれ?(笑)

そう、で…すね(笑)集団というか(笑)


— このバンドをやるのに参考にしたバンドとか形とかありますか?

全くないですね。


— それじゃ本当にまるっきり新しい試みということですね?

僕はフリージャズが好きだというのもあるので。お互いがお互いの音を聞きながらちょっかい出したりして、それに合う今自分の出したいものを出そうっていう時間があるんです。そういう感じでは僕としてはジャズ的な感覚はあります。


— 時間的な部分で変わったりする決め事の部分というのは、恒正彦の聴きどころであったりしますか?

始まってからとにかく3人でワーッと演奏しているので、その辺の勢いというか、アンサンブルではない3人が放出しているうねりを感じてもらうのが良いかなと思います。


— 最初のうちはバーッとやって、展開があって一人一人になったりとかも別に決め事ではない?

具体的に言うと最初の5分はみんなでバーっと演奏して、そのあと2分ずつ一人一人の部分があるというのは決まっています。


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